亡き師を偲ぶ

私には尊敬する三人の公認会計士がいます。

一人は、公認会計士としての日々の姿勢を教えて下さった大先輩。一人は、監査だけではなく税務の知識がなければオーナーとは渡り合えないことを身をもって教えて下さった先輩。もう一人は、会計センスでは絶対にかなわないと思うことができる同期合格の親友。

その中の一人である、大先輩(以下、K会計士)が1月21日に亡くなりました。大正14年生まれで、享年86歳でした。K会計士は、大東亜戦争では、海軍飛行予科練習生(通称「予科練」)として特攻隊員を志願し、出動命令を待っている間に終戦を迎えたという経歴の方でした。私が、K会計士と出会ったのは、平成2年に私が公認会計士第二次試験に合格し、中央新光監査法人に入所した時でした。その時、K会計士は中央新光監査法人の名古屋事務所長でした。入所して間のない新米会計士である私を本当に可愛がって下さいました。

私がK会計士に教えて頂いたことで、今でも、私が目指していこうと思っていることが、「公認会計士は、男芸者である」ということです。K会計士曰く、「公認会計士なんて、国家資格で偉そうだが、所詮、大した仕事はしていない。お客様あっての職業である。どうせ、大した仕事をしないのなら、経営者に気に入って頂けるような身だしなみ、話題、教養を身につけよ。」

K会計士は、容姿端麗、スーツ姿はダンディ、話題は仕事のみならず、範囲が広範。まさに、経営者の「男芸者」でした。

私は、この教えを「公認会計士、男芸者論」と名付け、この教え以降、心に留めてきました。

私は、K会計士に、たくさんの美味い店、夜の街、そしてゴルフ場に連れて行って頂きました。いずれも一流の場所で、当時の私には分不相応な場所ばかりでしたが、これらの場所が、今の私のホームグランドです。晩年、ゴルフができなくなったK会計士から、K会計士の自慢のゴルフ会員権も譲って頂きました。

K会計士とのお別れに当たって、今まで以上にK会計士の教えである「公認会計士、男芸者論」を心に留め、「稲垣、合格だよ」と言って頂けるように頑張っていきたいと、思いを新たにした週末でした。

K会計士、ご苦労さまでした。安らかにお眠り下さい。

そして、本当にありがとうございました。

私もK会計士のような、公認会計士、そして人間になれるように頑張ります。