「財前五郎」から学ぶこと
年末年始の休暇に、2004年にフジテレビで放映された「白い巨塔」の全編を見ました。
私は当時の放送を見逃していたため、新鮮に一気に全21回を見ることができました。
2012年の年頭に当たって、私が「白い巨塔」の主人公の財前五郎(唐沢寿明さん)から教えられたことを書きたいと思います。
財前五郎の野望は、留まるところを知りません。
また、自分の野望のためには手段を選びません。
常に自信一杯で、人を見下すような態度をとります。
綺麗な彼女(黒木瞳)がいます。
こういったところから、財前五郎は、「善人」の里見修二(江口洋介さん)との対比で、完璧な「悪役」ヒーローです。
しかし、私は、こう思います。
・「野望が留まるところがない」
→志が高く、目標が非常に高い。また、財前の「医療で人を救う」という目標は社会的に意味があり間違っていない。
・「自分の野望のためには手段を選ばない」
→思いが強い。諦めない。問題解決能力が高い(経営者向き)。
・「常に自信一杯に人を見下す」
→人一倍努力をしており、その成果としての実力に自信がある。
また、努力をした人と努力をしない人との間には差が開いて当然である。
こういうと、稲垣は、「財前五郎が目標」みたいに聞こえますが、そうは思ってはいません。
私は、財前に共感、同情する点もありますが、それ以上に、組織(浪速大学附属病院の第一外科)の長として大いに反省すべき点があると思うと共に、強烈に自省の念を感じました。
財前は、人一倍の努力により卓越した知識と技術を身につけ、超難易度の高い手術をすることができるようになりました。
その結果、財前の興味は、学会や世間が注目する難易度の高い手術や、そういった手術ができる地位を維持するための政治的な活動へと移り、それら以外の手術や患者を軽視するようになりました。
そして、自分の興味がわかない、いわばカンタンな手術や術後の経過措置等は、「自分がやる仕事ではない」、「若いスタッフがやればよい」、というオーラを全身から醸し出すようになります。
その結果、多くの患者は、財前を「大先生」で「雲の上の人」、「怖い」、「好きか嫌いかといえば、嫌い」と思うようになります。
スタッフも、財前の凄すぎる実力と絶大な権限を前にして、自分が思ったことが普通に言えなくなります。
そんな中で、医療ミス(肺へのがん転移の見落としによる患者の死亡)の裁判が発生し、第1審で勝訴するものの、第2審では逆転敗訴となります。
平均以上の医療サービスを提供したにもかかわらず、敗訴してしまった理由は、財前の「自分の実力への慢心」に起因する次の3点ではないかと思います。
・第三者の意見を謙虚に聞けないこと。
・患者(クライアント)の立場にたって考えられなくなっていること。
・医局内のスタッフ(部下)との信頼関係が欠如していること。
財前は、再三にわたる里見の助言進言を素直に聞くことができませんでした。
患者や遺族の気持ちを配慮しない財前の言動が、元来、裁判で勝つことが目的ではなく、一言謝ってもらえればそれで満足するはずの遺族を、かたくなまでに裁判で勝つことに執着させてしまいます。
財前と信頼関係のないスタッフは、いくら財前から地位や肩書きを与えられても、財前に不利になる証言を控えることもできず、逆に、積極的に証言してしまいます。
財前を見て、私は、「自分は大丈夫だろうか?」とヒヤッとしました。
・稲垣に一緒に悩んで欲しいと思って下さっているクライアントのご要望にベストを尽くしているだろうか?
・難易度が低いと思われる内容の業務は、軽視していないだろうか?
・自分が当たり前にできる業務を、みんなも当然にできると思っていないだろうか?
・自分と異なる専門的な判断を素直に聞くことができているだろうか?
・実力への慢心が財前の思考回路を微妙に狂わせたように、自分もそうなっていないだろうか?
(財前ほどの実力はありませんが・・・・)
財前五郎に、「初心に返る」、「謙虚さの大切さ」を教えてもらいました。
年頭に当たり、私の今年の目標は、論語の言うところの
「利によりて行えば、恨み多し」
をしっかりと心に刻むことであると認識することができました。
本年も頑張ります。
どうぞ宜しくお願いします。