監査法人の仕事って・・・・

私たち監査法人の仕事は、会社の決算書が正しいルールに従って作成されているかどうかを確かめることです。

そして、決算書が、会社の状態を正しく表している場合には、「監査報告書」で、決算書が適正である旨の意見を表明(いわゆる「適正意見」と言うものです)をします。上場会社は、監査法人に「適正意見」の監査報告書をもらえない場合には、上場廃止となり、会社の存続が危うくなります。NHKのテレビドラマ「監査法人」でも、上場会社の社長が、監査法人公認会計士に向かって、「適正意見」の「監査報告書」をもらうために、土下座をしたシーンがありましたよね。

昨日、わが監査法人のクライアントの経営者(以下、T社長)が、次のようなことをおっしゃいました。

監査法人の監査報告書は、未来志向でなくちゃいけない。」

T社長は、一般的に言えば、かなり「やんちゃ」な経営者で、いわゆる昔風の常識は通用せず、鋭い先見性と独特の感性で、業界の個性派リーダーとして君臨する方です。T社長の会社は、業績が良いことはもちろん、従業員の挨拶がしっかりとでき、会社内がとてもきれいで、賄いのおばさん(ごめんなさい・・)が作る昼食がとても美味しい会社です。普段から、T社長の会社運営や独特の言い回しの中に、「はっ!」とさせられることが多い会社です。昨日のT社長の「未来志向の監査報告書」の発言の趣旨は、私は次のように理解しました。

監査法人の監査報告書は、会社の過去の業績を表す決算書を対象にしていることはわかっている。

・監査報告書で、会社の未来を保証することなんて、できないこともわかっている。

・しかし、監査報告書を見る人は、監査報告書に「適正」と書いてあれば、「この会社は大丈夫なんだ」と期待する。

・また、監査法人から「適正」と言ってもらわなければ、会社の信用は失墜し、存続すら怪しくなる。

・つまり、監査法人は、社会的な影響が大きいので、こまかな過去の数値ばかりではなく、経営者や会社をもっとよく見て、大局的な判断をしなければならない。

確かに、どんなにたくさんの資料を見ても、どんなに高度な監査手続きを行っても、経営者が本気で隠そうと思えば、監査法人を騙すことができます(私自身も、そういう嫌な経験もしました)。また、「もしかしたら、上手くいかないのでは・・」と思い、極端に慎重になれば、会計処理も際限なく保守的になります。

監査法人の社会的な役割は、社会で活躍する会社の決算書が正しいことを保証することで、さまざまな経済活動を円滑にすることです。過度に厳格なモノサシで、社会に必要とされる会社の、健全な成長を妨げてはならないのです。とすれば、私たちが、今、向き合っている会社が、将来、社会で活躍すべき会社なのかどうかを見極めることが最も重要な仕事なのではないでしょうか。

「今の私には、そういう能力があるのだろうか?」また、「社会的に意味のある監査業務ができているだろうか?」

そんな自戒をさせて下さった、T社長の発言でした。

良い機会を下さり、ありがとうございました。

がんばります。