会長(父)と社長(息子)
私たちの事務所のクライアントに、父親である会長と、息子である社長がいらっしゃる会社がいくつかあります。今回は、そんな会社でよく見かける風景について、少しまとめてみたいと思います。
表面的に起こっている現象としては、次のようなことです。
・会長は、社長のやることなすことに、一回一回、文句を言います。
・会長は、社長の頭ごなしに、昔の自分の部下に指示を出します。
・社長は、会長が反対すると、ムキになって自分の意見を通そうとします。
・会長と社長は、会社の従業員や、金融機関などの外部の取引先の前で喧嘩をします。
・従業員や取引先は、会長と社長の間で、どのように対応して良いのか悩みます。
これから、社長職を後継者に渡そうとしている方は、「まさか」「そんなケースはレア?」とお思いかも知れませんが、上記のような光景は、まあまあよく(very often)見ます。
私たちは、会社の財務の応援団として、会長と社長の間に入り、双方のお考えを聞きし、会社が良い方向へ舵を切っていけるようにお手伝いすることも、仕事の1つと考えています(もちろん、会社からの依頼があればですが)。そんな経験から、上記の現象の際の、会長と社長の心の声を想像すると、以下のようなことがほとんどのような気がします。
【会長の心の声】
・自分の息子に事業を承継することができて、とても満足している(嬉しい)。
・息子である社長にことが、心配で心配で仕方がない。
・良かれと思って社長にアドバイスをしたら、言うことを素直に聞かないので少し感情的になって、思っている以上に強い言葉を使ってしまった。
・社長と喧嘩した後、こちらから「ゴメン」と言いにくいので、その後、何となく気まずい雰囲気だと思っている。
【社長の心の声】
・バトンを渡してくれた父親を尊敬しているし、大好き。
・父親に心配をかけたくないので、一生懸命に仕事を頑張りたい。
・父親のアドバイスは的を得ているが、時代も違うので、まずは自分の良いと思うようにやってみたいので、アドバイスに対して否定的な言い方をしてしまった。
・父親の強い口調に対して、感情的に、強い口調で反抗してしまった。
・会長と喧嘩した後、こちらから「ゴメン」と言いにくいので、その後、何となく気まずい雰囲気だと思っている。
つまり、「会長と社長」という関係に、「父親と息子」という関係が少しだけ入り込んだ結果、コミュニケーションが上手くいかないということです。多くの場合、結果として、息子である社長は、父親である会長の意見を尊重した舵取りをしていきますが、父親と息子の関係はギクシャクしたままです。そして、会長が亡くなった後、社長は、会長のアドバイスのありがたみを、初めて口にすることができます。しかし、これではもったいないですよね。創業から事業承継まで、ご苦労の連続であった創業者に、気持ちの良い会長時代を過ごして頂きたいと思います。そのためには、会長と社長は、もう少しだけ、以下のように考えてみてはどうでしょうか?
・会長は、もっともっと社長の能力を信じよう!
・社長は、もっともっと会長の経験に学ぼう!
・コミュニケーションが上手くいかない時は、一緒に飯を食おう!
以上